京都・南座で2026年10月25日まで上演されていた、市川團十郎特別公演に行ってきました。
市川團十郎さんは、ここ何年か秋の時期に南座で特別公演をされています。
私も都合が合えば伺うようにしています。
昨年もこの特別公演を観劇しました。
昨年は昼の部を観劇。夜の部も見てみたいと思ったのですが、その時にはすでにチケットが完売していて、見ることができませんでした。
2025年の「市川團十郎特別公演」を観劇した時の記事はこちら
今年も團十郎さんが南座に来られるということで、楽しみにして出かけてきました。
私にとって今年の歌舞伎観劇は、5月の大阪松竹座さよなら公演以来です。
久しぶりの歌舞伎観劇です。
市川團十郎特別公演
今回の市川團十郎特別公演は、昼の部と夜の部で内容が大きく異なります。
昼の部は歌舞伎の演目をしっかり楽しむ構成。
『鞘當』『与話情浮名横櫛 源氏店』『勧進帳』の3本です。
『源氏店』についてはA・Bプログラムがあり、日によって配役が変わります。
一方、夜の部は「Invitation to KABUKI 歌舞伎の世界」。
歌舞伎を初めて見る方にも楽しみやすいように、新之助さんによる説明や、團十郎さんが舞台上で化粧や衣裳を整えていく様子を見せる趣向なども盛り込まれていました。
今回、私が見たかったのは昼の部。
なかでも『勧進帳』で中村梅玉さんが演じる富樫を見たいと思っていました。
一度は諦めた昼の部のチケット
ただ、チケットを取るのがなかなか大変でした。
私がチケットサイトを見たのは、一般発売日の当日のお昼頃だったと思います。
その時点で、昼の部の見やすそうな席はほぼ売り切れ。
三等席がいくつか残っているくらいでした。
せっかく歌舞伎を見るのであれば、できれば見やすい席で見たい。
そう思って、その時はいったん購入するのを諦めました。
その後も、ときどきチケットサイトを確認していたところ、たまたま私が行ける日の昼の部に一等席の空きが出ているのを発見。
すぐにチケットを取り、なんとか観劇することができました。
当日、南座に到着して驚いたのが団体のお客さんの多さです。
この日の昼の部は満席
高校生の団体観劇があり、それ以外にもツアーの方が何組もいらっしゃいました。
実際、私の隣に座られた方もツアーで来られていて、歌舞伎を見るのは初めてとのことでした。
おそらく団体用に確保されていた席の一部が戻り、それを私がたまたま取ることができたのかなと思います。
映画『国宝』をきっかけに、歌舞伎を見てみたいという方も増えているのでしょうか。
一歌舞伎ファンとして、歌舞伎を見る方が増えるのはうれしいことです。
めて歌舞伎を見ると、独特の言葉や舞台上のお約束が分かりにくいこともあります。少し予習してから見ると、同じ舞台でもずいぶん楽しみ方が変わります。
『歌舞伎の解剖図鑑』は、演目や衣裳、小道具などがイラストで紹介されていて、歌舞伎に興味を持った方にも読みやすい一冊です。
開演前から楽しめる館内展示
市川團十郎特別公演は、舞台だけではなく、館内にも歌舞伎に親しめるさまざまな工夫がありました。
今回は、籠に乗って写真を撮ることができるフォトスポットもありました。
市川團十郎さんが描かれた作品も展示されていました。
私が写真を撮った作品の一つは、笛を吹く人物を描いたもの。
おそらく光源氏でしょうか。
團十郎さんが海老蔵さんだった頃、南座で光源氏を演じられた公演を見たことがあります。
その時の舞台がとても印象に残っているので、絵を見ながら懐かしく思い出しました。
もう一枚は、隈取と、新之助さんがお稽古をしている姿を描いた作品。
團十郎さんから見た新之助さんという目線を感じて、なんだか微笑ましくなりました。
歌舞伎の音を作る小道具も体験
歌舞伎で実際に使われる音の小道具も展示されていました。
雨の音や波の音など、舞台を見ていると何気なく耳にしている音を、実際に自分で鳴らすことができます。
私は一通り体験してみました。
なかでも印象に残ったのが、箱の中の小豆を動かして波の音を作るもの。
思っていた以上に重たい!
実際の舞台では、これをタイミングよく動かしながら音を作っているわけで、小道具を担当されている方も大変だなと思いました。
開演前からかなり楽しんで、いよいよ昼の部の始まりです。
昼の部
其俤対編笠「鞘當(さやあて)」
最初は『鞘當』。
不破伴左衛門を市川右團次さん、名古屋山三を市川九團次さん、二人を止める留男を市川男女蔵さんが演じます。
すれ違った二人の刀の鞘がぶつかったことから喧嘩になり、それを留男が仲裁するという、短い一幕です。
開演直後ということもあり、まだ席に入ってくる方もいらっしゃる時間帯。
短い時間で、歌舞伎らしい華やかさや様式美を楽しめる演目から始まるというのもよかったです。
九團次さんは、歌舞伎の家に生まれた方ではなく、一般家庭からこの世界に入られた役者さんです。
團十郎さんが海老蔵さんだった頃から、一門の舞台で頑張っておられる姿を拝見してきました。
今回改めて、本当に素敵な役者さんになられたなと思いました。
九團次さんくらいのお年になると、一般の社会ではそれなりのベテランということになるのでしょうが、歌舞伎役者さんはこれからますます味が出てくる年代。
これからもいろいろな役で拝見したいです。
与話情浮名横櫛「源氏店」
続いては、『与話情浮名横櫛』「源氏店」。
私はAプログラムでした。
Aプログラムでは、与三郎が中村虎之介さん、お富が大谷廣松さん、蝙蝠安が市川九團次さん、和泉屋多左衛門が市川右團次さんでした。
今回とても印象に残ったのが、廣松さんのお富。
本当に艶っぽくて美しかったです。
虎之介さんの与三郎も、九團次さんの蝙蝠安も、それぞれ雰囲気があって素敵でした。
「しがねえ恋の情が仇」という有名なせりふが登場する、江戸を舞台にしたお芝居です。
江戸弁でポンポンと交わされる言葉もテンポがよく、関西を舞台にした上方歌舞伎とはまた違った空気を楽しむことができました。
歌舞伎十八番の内「勧進帳」
そして最後は『勧進帳』。
今回、私はこれを見に昼の部を取ったと言っても過言ではありません。
『勧進帳』は何度も上演されている歌舞伎十八番の人気演目で、私にも印象に残っている舞台がいくつもあります。
片岡仁左衛門さんが富樫を演じられた時。
そして、八代目尾上菊五郎さんが富樫を演じられた舞台も印象に残っています。
今回は、人間国宝・中村梅玉さんの富樫をぜひ見てみたいと思っていました。
梅玉さんは1946年生まれで、この公演時は80歳。
それでも舞台に立たれる姿にはしっかりとした存在感がありました。
私が梅玉さんの富樫から感じたのは、厳しさだけではなく、どこか情けのある優しさでした。
義経一行を疑いながら問い詰める関守ですが、ただ怖い人物という感じではありません。
以前、團十郎さんが、お父様を亡くされた後に梅玉さんにいろいろ支えていただいた、という趣旨のお話をされていたのを読んだことがあります。
そうした役者さん同士の長い関係まで思いながら舞台を見ると、同じ『勧進帳』でもまた違って見えてきます。
團十郎さんの弁慶と梅玉さんの富樫。
お二人のやり取りをじっくり見ることができてよかったです。
飛び六方と手拍子
最後、弁慶が花道を飛び六方で引っ込んでいく場面。
途中で客席から手拍子が始まりかけました。
ただ、周りのお客さんが合わせなかったためか、途中で手拍子は止まりました。
私は『勧進帳』の飛び六方では、手拍子がない方が好きです。
役者さんが踏む飛び六方のリズムと、客席の手拍子のテンポは必ずしも同じではありません。
手拍子に合わせるのではなく、弁慶が花道を進んでいく姿そのものを見ていたいと思いました。
米吉さんの義経が美しい
もう一人、とても印象に残ったのが中村米吉さんの源義経です。
本当に美しい。
米吉さんは女方をされている姿を拝見することも多いですが、今回の義経も本当にきれいでした。
実在した義経が実際にどのような容姿だったのかは分かりません。
でも、こんなに美しい義経だったら、家臣たちが心酔してついていくのも分かるような気がする。
そんなことまで思ってしまうほど、美しい義経でした。
ベテランから若い役者さんまで楽しめた昼の部
今回の昼の部では、虎之介さん、廣松さん、米吉さんなど、これからますます活躍される役者さんたちの姿を見ることができました。
一方で、人間国宝である梅玉さんの富樫も見ることができました。
何度も見ている演目でも、誰が演じるか、その役者さんが今どの年代にいるのかによって、まったく違って見える。
それも歌舞伎を見続ける楽しみの一つなのだと思います。
久しぶりの歌舞伎観劇でしたが、とても充実した昼の部でした。
次はどんな舞台を見ることができるのか。
また歌舞伎を見に行きたいと思います。
以上、ご参考になればうれしいです。
それでは。
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