先日、若年女性の尿閉の患者さんを診察しました。
若年女性で尿閉、というのは珍しく、この機会に調べたのでご紹介します。
主な参考資料は、『女性下部尿路症状診療ガイドライン [第2版] – 日本泌尿器科学会』です。
尿閉とは
尿閉とは、「尿が作られているのに、排泄されていない状態」を言います。
尿がまったく作られていない状況を「無尿」と言います。
ですので「尿が出ません」という患者さんが来院したときには、「尿閉」なのか「無尿」なのかをまず調べることになります。
調べる方法としては、膀胱の中に尿がたまっているかどうか。
尿閉の場合は、膀胱内に尿がたまっていて下腹部がふくらんでいたり、下腹部の違和感や痛みを患者さんが訴えることもあります。
女性の尿閉の原因
女性は男性とは解剖学的に異なっているので、尿閉の原因も異なってきます
(男性の場合は、前立腺肥大によるものが圧倒的に多い)
女性の尿閉の原因として考えるべきものを記載します
1:機械的尿路閉塞
尿路結石や、悪性腫瘍、凝血塊などによって、尿の排泄経路が閉塞している場合や
子宮筋腫や骨盤臓器脱など尿路系以外の原因によって排泄が阻害されることがあります。
2:機能的尿路閉塞
中枢神経や末梢神経の障害によって、尿が排泄できない状態です
障害部位としては、仙髄より上位の障害で起きることが多いです。
疾患名としては、脳血管障害や脳腫瘍、頻度は少ないですが髄膜炎後に尿閉を来す場合や、性器ヘルペス感染に併発する仙髄神経根炎に伴う尿閉を来すElsberg症候群という疾患もあります。
3:薬剤性
よく知られているのは、感冒薬や抗ヒスタミン薬、抗コリン薬です。
排尿筋収縮力が低下し尿閉になります
4:手術後
手術の後には手術操作の影響や、尿道バルーンを入れていた影響などで尿閉になることがありいます。
5:心因性
これまであげた、尿閉の原因となる疾患が見当たらず、尿閉が発症する際に強いストレスや不安など心因性の要素と関係がある場合に判断します。
6:そのほか
明らかな神経疾患や原因がなく、外括約筋の緊張更新による排尿障害をきたす病態をFowler症候群といいます。30歳以下の女性にみられ、尿閉の原因になるといわれています。
尿閉の対処法
膀胱内に尿があって、尿閉であるとわかった場合、対処法としては尿を出すためのカテーテルを入れる、などがあります。
尿閉の結果、尿路感染症を起こしていることもあるので、尿検査は実施しておきましょう。
以上、女性の尿閉の原因についてまとめました。
今回参考にした『女性下部尿路症状診療ガイドライン [第2版] – 日本泌尿器科学会』は無料で誰でも見ることができるので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
以上、ご参考になればうれしいです。
それでは
〇女性の救急外来に特化した本もあります