犬や猫を飼っている人も多いと思います。ペットにかまれたりひっかかれたりしたらどうしたらいいのでしょうか?
先日参加した東京都立小児総合医療センター救命救急科主催の「都立小児ERセミナー」で、とても分かりやすい講義がありました。
https://parallel-careers.com/study-38/2373/
そちらで学んだ内容から、気を付けた方がよい理由、もしかまれたりひっかかれたりしたらどうしたらよいのか、ご紹介します。

動物咬傷って?
動物に噛まれることを、動物咬傷、と呼びます。
環境省の統計によると日本では、犬>>猫>人 の順で発生しています。
動物咬傷では、傷の処置をするだけではなく、感染症対策もすることが必要になります。
理由は、猫や犬、人の口の中には様々な菌がいるからです。
噛まれたり、ひっかかれたりすることで、傷口からその菌が入り感染症を引き起こすことがあります。
ケガをしてから24時間以内に発症することが知られているので、けがの対応は早く行う必要があります。
では、動物別に注意点を見ていきましょう。
犬
環境省の調査によると、1年に4300件、犬にかまれるという事故が起きています。
死亡事故では毎年1人以上です。
犬は強い顎でかみつくのと、噛んだまま振り回す習性があるので、引き裂かれたような傷になります。
かなり強い力が加わるので、重症外傷になることもあり、小さなお子さんでは命に危険が及ぶこともあります。
猫
かなり鋭い牙をもっていて、歯が全体的に細長いですが、顎の力はそれほど強くありません
傷は穿刺創になっていることが多いです。
傷が奥まで達していることもあるので、筋肉や腱が損傷していないか注意深く診察を行います。
また、猫は獲物を抑え込む習性もあるので、ひっかき傷も同時に存在することが多いです。
猫は手をなめることもあるので、口の中の菌が爪についていて、ひっかき傷であっても感染症のリスクがあります。
ヒト
歯は犬や猫と比べるとするどくはなく、思いっきりかむことはありません。
そのため、噛んだあと、として残ることが多いです。
ただ、けんかでこぶしに歯が当たった場合は、Fight bite と言い、関節内に傷が進展していることもあり感染症への注意が必要です。

感染症のリスクって?
犬よりも猫の方が感染の恐れがあるので注意が必要です。
細菌としては、Pasteurellaによるものが多いです。
また、犬や猫の口腔内に常在しているCapnocytophagaの感染では、命に係わることもあります。
厚生労働省もカプノサイトファーガに関する情報発信を行っています。
ではどうしたらよい?
まず、よく洗い流して、最近の感染リスクを減らしましょう。
その時に、歯など異物がないかよく確認してください。
猫や犬は歯周病になりやすく、歯をかんだ刺激で歯が折れることがあります。
異物が残っていると感染症が悪化する恐れがあります。
猫や犬の歯が折れていた場合、噛まれた後の感染症の治りが悪い場合は異物がないか検査を行うことがあります。
その際は、超音波検査やレントゲンを用います。
創の処置はどうしたらいい?
縫うことで感染のリスクがあるので基本的に傷は縫いません
ただ、縫わないことで傷がきれいに治らないこともあります。
そのため、美容上のベネフィットと感染リスクを天秤にかけて、処置の方法を考えます。
アメリカ感染症学会では、以下のように推奨をしています
- 穿刺創は一時閉鎖してはいけない、挫創も一時閉鎖を推奨しない
- 顔面は美容上重要、血流が多く感染率は低いので、縫合による一時閉鎖を検討してもよい
感染症への対応は?
ただ噛まれた傷である、というだけで抗菌薬を飲む、予防的抗菌薬投与の必要はありません。
予防的抗菌投与によって予防投与は、感染率を低下させなかったという報告や、手指の感染率は低下させるかもっという報告があります。
が、現時点ではどちらが良いかの結論は出ていません。

抗菌薬投与が必要になるのは以下のような状況です
- 免疫不全者
- すでに感染症が起きている人
- 縫合を行った場合(感染リスクが高いため)
抗菌薬の種類としては、アモキシシリンクラブラン酸が推奨されています。
抗菌薬投与を行った場合では、24~48時間以内に感染症が起きてないか、確認をする必要があります。
いかがでしたでしょうか。
ペットと安全に暮らすために、またかまれたりしたときにけがを悪化させないために、ご参考になればうれしいです。
それでは。
〇こういう「動物咬傷」も含めて、ちょっとしたことが網羅されている本。救急外来に1冊あると便利。