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ヘリウムガスを吸った患者さんを診療する際のチェックポイント

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風船を膨らませる目的でつかわれることの多いヘリウムガス。

その一方で、誤った使い方をすると命に危険が及ぶこともあります。

実際、「ヘリウムガスを吸って声が変わる」ことを検証するバラエティ番組に出演していた女性が命を落としたという悲しい事件もありました。

依然としてヘリウムガスは販売されており、インターネットでも購入することができます。

今回「ヘリウムガスを吸った患者さん」を診察するときのポイントをまとめました。

なぜヘリウムガスを吸うのが危険なのか

市販されているヘリウムガスは大きく二つに分けることができます

  1. 声を変えるためのガス:酸素が20%含まれている
  2. 風船を膨らませるためのもの:ヘリウム100%

これらのガスを吸うことで、酸素欠乏状態になる恐れがあります。

特に、密閉状態でヘリウムガスを吸うと危険性が高いです。

酸素が20%含まれているヘリウムガスでも、酸素欠乏による事故は起きており、注意が必要です。

ヘリウム中毒の症状

ヘリウムが空気と置き換わることで、酸素濃度が低下し、低酸素血症が起きます。

大気中の酸素濃度によって症状が変わります。

  • 酸素濃度15%~16%:頻呼吸、頻脈、注意力低下、頭痛
  • 酸素濃度6~8%以下:死に至る意識消失

ヘリウム中毒の合併症

ヘリウム中毒による症状以外にも、以下の合併症が起こる恐れがあります。

  • 肺の圧損傷:皮下気腫・縦郭気腫・気胸

  肺が拡張したところに、スプレー缶から噴射されたガスを持続吸引することによて起こります

  • 脳空気塞栓症:卵円孔開存や生理的な肺血管シャントにより、脳血管へ空気が流入し発症。

  意識障害や、麻痺、痙攣が起きている場合は脳空気塞栓症の可能性を考える必要がある。

ヘリウム中毒の治療法

解毒剤はなく、起きた症状に対する治療を行います(対症療法)

脳空気塞栓症がある場合は、高圧酸素療法が検討されることがあります。

そのほかに注意することとしては

  • 意識障害の原因を考える:ヘリウムガスの吸引だけでなく、薬剤の影響などそのほかの意識障害の原因も考えること。
  • ヘリウムガス吸引にいたった背景を考える:精神的な問題など、なぜヘリウムガス吸引や中毒が起きたのかも考えましょう。

以上、ご参考になればうれしいです。

それでは。


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